あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています

「遅くなりました。順番を、間違えたくなかったので」

「順番?」

「藤堂の件が先です。あの状況で八重樫さんに会わせても、あなたは謝ることしかできない。……謝る相手ではなく、会いたい人に会ってほしかった」

この人は、そういう計算をする。
効率の顔をした、効率じゃない計算を。

信号待ちで、このみは切り出した。
切り出す練習は、実は昨日の夜からしていた。

「課長に、聞かれました。その先のことは話してるのかって」

「……その先」

「再建が終わったら、篠宮さんは次の案件に行きます。どこの街かも分からない。それで、あの、私」

練習した言葉が、飛んだ。
飛んだので、練習していないほうの言葉が出た。

「私も、計画に入れてください。手放す予定がないなら、置いていく予定も、なしにしてほしいです」

信号が青になった。
どちらも、渡らなかった。

篠宮はこのみに向き直って、少しのあいだ、黙っていた。
それから、いつもの平らな声より、半音だけ低い声で言った。

「最長の計画を立てます。期日のない計画は初めて組みますが、……初めてなので、時間をかけます。一生かけて、修正しながら」

それから、実務の声を半分だけ混ぜて、付け足した。

「次の案件は、通える範囲で選びます。会社には、もう伝えてあります」

もう、伝えてある。
この人の計画は、いつも言葉より先に動いている。

< 113 / 117 >

この作品をシェア

pagetop