あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
「ご説明します。お時間、十分ほどいいですか」
説明のあいだ、主任は一度も遮らなかった。
終わると、規程の写しを二部、要求した。
若いのに配る、と言った。
「……信じるかどうかは、まだ様子見だ」
まだ、が、また出た。
「はい。様子を見ていてください。見られている前提で、運用します」
主任は小さく頷いて、写しを持って戻っていった。
(戸倉さん、ありがとうございます)
工場の主の顔を思い浮かべて、心の中でだけ、頭を下げた。
昼前に、製造二課の宮下主任が来た。
買収が発表された日、最初にカウンターに来た人。
規定ですので、と言って帰した人だ。
「倉橋さん。ちょっといいか」
「はい」
「新しい評価の、育成貢献ってやつな。あれは、何を見られるんだ。うちは若いのが多いから、教えることは教えてるが、ああいうのは紙にならんだろう」
このみは、規程のファイルを開いた。
開かなくても言える内容だったけど、開いて、宮下主任のほうへ向けた。
「規定で、こう決まっています。同行育成の時間。引き継ぎの質。後輩のトラブル対応への同席。……宮下さんが二課でされていることは、全部ここに入ります。紙になります。評価者が拾えるように、行動の例まで規定に書いてあります」
「……ほんとに見られるのか。お題目じゃなくてか」
「規定ですので」