あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
同じ五文字だった。
三年間、逃げ場所にしてきた五文字。
その言葉に、続きを足した。
「この規定にした人間が、ここにいます。運用がお題目になっていたら、私に言ってください。宛先は、私です。直しますので」
──今度は、制度のせいにしなかった。
宮下主任は、規程の該当ページをしばらく眺めて、それから顔を上げた。
「……倉橋さんに聞けば、分かるんだな」
「はい。分からないことは、いつまでに調べるかをお答えします」
「そうか」
主任は頷いて、エレベーターのほうへ歩いていった。
あの日、階段を選んだ人が、今日はエレベーターを待っている。
ただそれだけのことを、このみは名簿を揃えるふりをしながら、最後まで見ていた。
夕方、給湯室で千夏に会った。
「説明、順調?」
「質問が多くて、うれしい悲鳴」
「よかったじゃん。……ねえ、うちの会社さ、まだ全然大変だけど」
千夏はカップにお湯を注ぎながら言った。
「前より、ちゃんと大変って言える会社になったよね。誰のせい、じゃなくて、何をどうする、で喋れるっていうか」
情報通の千夏が言うなら、そうなのだろう。
「あ、それとね、これは総務の公式見解なんだけど」
「何」
「篠宮さん、このみを見るときだけ目が違うの、もうみんな気づいてるから。隠す努力、無駄だから」
「公式見解やめて」