あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
言葉を選ぶ前に、口が動いていた。
「それは、篠宮さんが全部悪者になるということですか」
篠宮の手が、一瞬だけ止まった。
「──社内の人間同士で恨み合うのが、再建ではいちばんの損失です。恨みは外に向くほうが、早く、効率的に再建が進む」
資料の説明とまったく同じ、平坦な何も感じさせない声で篠宮が言う。
「私は一年半でいなくなります。恨みごと持って帰るのが、外部の仕事です」
半年で三百人切った、という千夏の声が、頭の中で再生された。
(三百人切った人は、三百人ぶんの恨みの宛先を、自分にしてたってこと……?)
「……わかりました」
このみの返事に、篠宮は短く付け足した。
「進め方を先に固めるのは、迷う時間を消すためです。決められない時間が、いちばん人を傷つけるので」
その一言だけ、ほんの少し、速かった。
「では、規程から見せてください。写しはありますか」
このみは持参したファイルから、評価制度の規程を差し出した。
自分も作成に関わった規程だ。
もちろん、表紙には人事部という記載しかないのだが。
「先に、評価以外の制度から確認させてください。等級や役職定義が評価に関わってくることも多いので」
言うなり、篠宮は腕時計を一瞥して立ち上がった。
机を回り込んで、このみの隣に立ち、このみのパソコン画面を見つめる。