あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
返事が半音高くなった。
「四等級の滞留年数は」
「……平均六・二年です。長いです。詰まって、います」
「詰まってますね」
篠宮は事務的に頷いて、自分の席へ戻っていった。
何事もなかったような顔で、資料の山から次の一冊を引き抜いている。
このみは別表の同じ行を、意味もなく三回読んだ。
数字が頭に入らない。
(……なに、どぎまぎしてるのよ?)
なんだか調子が狂う。
……やりにくい。
……たぶん、顔がいいから、だけじゃない。
この人は、名簿の並びを含め、いろいろなことを見ている。
見られている側としては落ち着かない。
篠宮は受け取った規程のページをめくり始めた。
速いのに、読み飛ばしている感じがしない。
等級定義のページで、指が止まった。
評価項目の一覧だった。
成果目標。
行動評価。
等級別のウェイト。
篠宮は、そのページを開いたまま、しばらく動かない。
それから、顔を上げずに言った。
「──この制度、項目がひとつ足りない」
心臓が、嫌な音を立てた。
「どういう、意味ですか」
篠宮は答えなかった。
規程を閉じて、表紙をこのみのほうへ向ける。
「次回までに、この規程の改定履歴をお願いします。──改定前の版も、すべて」
(改定前の版も、すべて──)
その意味を考えると、指先から血が冷えた。