あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています

返事が半音高くなった。

「四等級の滞留年数は」

「……平均六・二年です。長いです。詰まって、います」

「詰まってますね」

篠宮は事務的に頷いて、自分の席へ戻っていった。
何事もなかったような顔で、資料の山から次の一冊を引き抜いている。

このみは別表の同じ行を、意味もなく三回読んだ。
数字が頭に入らない。

(……なに、どぎまぎしてるのよ?)

なんだか調子が狂う。
……やりにくい。

……たぶん、顔がいいから、だけじゃない。
この人は、名簿の並びを含め、いろいろなことを見ている。
見られている側としては落ち着かない。

篠宮は受け取った規程のページをめくり始めた。
速いのに、読み飛ばしている感じがしない。

等級定義のページで、指が止まった。

評価項目の一覧だった。
成果目標。
行動評価。
等級別のウェイト。

篠宮は、そのページを開いたまま、しばらく動かない。
それから、顔を上げずに言った。

「──この制度、項目がひとつ足りない」

心臓が、嫌な音を立てた。

「どういう、意味ですか」

篠宮は答えなかった。
規程を閉じて、表紙をこのみのほうへ向ける。

「次回までに、この規程の改定履歴をお願いします。──改定前の版も、すべて」

(改定前の版も、すべて──)

その意味を考えると、指先から血が冷えた。

< 16 / 117 >

この作品をシェア

pagetop