あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
書庫に着くまで、会話はなかった。
変に長い三分間だった。
書庫の中は、埃と古い紙の匂いが充満していた。
議事録の箱は、棚の一番上にある。
このみが脚立に手を掛けるより先に、篠宮がこのみの後ろから被さるように手を伸ばして、箱を下ろす。
二箱、三箱。
ワイシャツの袖に埃がつくのも構わない。
そして、一番下の箱に議事録が入っていた。
「十五年前の合理化のとき、会社側の出席者は」
このみは、議事録のページをめくりながら出席者の記載を探す。
「えっと……当時の総務部長と人事部長。……あと、当時の経営企画部長の藤堂さん。今の常務です」
篠宮の手が、一瞬止まった。
「そうですか」
いつも即断の篠宮にしては、何かを迷っているようだった。
書庫からの帰り、本館のエレベーターで藤堂常務と乗り合わせた。
「おや、倉橋さん。精が出るねえ」
柔らかい声。
エレベーターの中に、甘い香水の匂いが満ちる。
「篠宮さんとは、うまくやれてる? 彼は優秀だが、外の人だからね。困ったことがあったら、いつでも私に言いなさい」
「……ありがとうございます」
扉が開いて、藤堂は先に降りた。
降り際、このみの抱えた箱に、一瞬、目が向いた気がした。
背表紙には、十五年前の年度が書いてある。
気のせいだと思うことにして、このみは箱を抱え直した。