あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
『考えすぎ。あの人、恋愛とかそういう回路ないから』
『回路がない人は、トレーも持たずに食堂にきません〜』
『偶然でしょ。仕事の人だもん』
打ちながら、社食の列の、あの声を思い出していた。
列の外から、まっすぐに飛んできた「倉橋さん」。
(……確かになんで、食堂にいたんだろう。偶然だよね?)
千夏からはスタンプだけ返ってきた。
ジト目の猫だった。
岡本くんとの約束は結局流れた。
向こうの部で急な会議が入ったらしい。
残業を終えて、フロアの電気を落としに奥まで歩く。
フロアを出ると、用途の分からない部屋にまた明かりがついている。
前と同じく机が四つ、電話機のない島。
──ただ、前とは違い、その一番手前の席に、段ボールがひとつ、置かれていた。
側面に、マジックで名前が書いてある。
検査課の、あの主任の名前だった。
先週、人事に怒鳴り込んできた人。
戸倉さんの次に、篠宮に食ってかかった人。
(……なんで)
なんで、あの人の荷物が、ここにあるんだろう。
消灯したフロアで、部屋のあたりだけ、非常灯が緑に光っていた。