あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
父と同じ歳で、会社の傾きを見て早めに辞めた人たちは、同業に拾われていったらしい。
父だけが、拾われなかった。
面接で資料室の三年を聞かれるたび、父は答えられなかったのだと思う。
会社に置いてもらった──父は、よくそう言った。
湊が許せないのは、父ではない。
そんな言い方を父にさせた、会社のほうだ。
だから湊の仕事は、素早く意思決定を進めることだ。
切ると決めたら、最速で切る。
基準は隠さず、支援は出し惜しみしない。
そして、恨みは自分宛にする。
情で残すのは、決めることから逃げているだけ。
逃げた分のつけは、誰かが必ず払うことになる。
湊は別に、自分が首切り屋でも構わなかった。
あの日の父のような人を、二度と見たくない。
そのために必要なことなら、何でもやる。
それだけだ。
二十三時。
会社の近くで借りたホテルの部屋で、湊は議事録を読んでいた。
長期契約の部屋には、私物と呼べるものがほとんどない。
机の上に並んでいるのは、仕事道具だけだ。
読んでいるのは、十五年前の労使協議の議事録だ。
彼女の会社──ハルシマ文具工業は、あのときも大きなコストカットをしている。
紙は薄黄色く変色して、倉庫の埃の匂いがしみついていた。
出席者の欄に、当時の経営企画部長──藤堂の名前がある。