あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています

十五年前の藤堂は、一度も「解雇」と言っていない。
円滑な人員の適正化。
本人の意向を尊重した出口。
並んでいるのは綺麗な言葉だけで、結果だけが残っている。
百二十人が、「自己都合」で辞めた。

(藤堂はきっと、十五年前と、同じ手口を使うつもりだろう)

再建の期間中、金の動く稟議には、すべて目を通している。
その中に、一件、妙なものがあった。
集中業務スペースの設置。
起案は経営企画で、決裁は藤堂。

きっと電話機のない、あの部屋のことだ。
あの部屋に人が増える前に、急ぐ必要がある。

湊はノートに一行書いた。
──部屋の稼働前に潰す。

過去の議事録を年度順に読み進めていくと、人事制度改定を行ったときの議事録にたどりついた。
そこには、ピースフェリーが行った人事制度設計の勉強会の資料が挟まれている。

この勉強会には、湊も講師の一人として参加していた。
その際に名刺を交換した当時の人事部長は、既に退職している。

その席で、人事部長から改定中の人事制度案を見せられた。
詳細を聞くほどに、これを作ったのが本人でないことは明らかだった。

この制度を書いた人間は、別にいる。
そして、この制度の中に、ひとつだけ異質な項目があった。

──育成貢献。

育成を評価項目に入れている会社なら、いくらでもある。
ただ、そのほとんどは、お題目で終わっている。

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