あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています

あの名簿と、あの項目。
同じ人の仕事だと、一目で分かった。

この人は、人を見ている。
だが、分からないことがひとつある。

あの項目は、なぜ消えたのか。
彼女が自分で消したのか、消せと言われて消したのか。

消したとき、この人は、黙ったのか。
それとも一度は、戦ったのか。

そして今も、あの項目を書いたときの気持ちは残っているのか。
──それとも、「規定ですので」と言うだけの人間になってしまったのか。

カウンターパートに彼女を選んだ理由の半分は、それを確かめるためだ。

残りの半分は、もっと単純だ。
戸倉が怒鳴り込んだ日、カウンターの内側で、彼女は逃げなかった。
一緒に働くなら、タフな人がいい。
……これは、実務の話だ。

(あんな制度を作った人間を、藤堂のような人間の下で潰させるつもりはない)

ノートパソコンの受信箱に、未処理の申請がひとつ残っている。
営業部からの、人事部宛の打ち合わせ打診。
差出人の名前は、もう覚えてしまった。

窓口は集約しているから、打ち合わせなどせず、私が出向く。
……これで、正しい、はずだ。
打ち合わせは断り、こちらから出向く、という文面を書く。

湊は付箋のページを開いたまま、明日の面談リストに目を戻した。
十七時半の枠に、また一人、増えていた。

< 34 / 117 >

この作品をシェア

pagetop