あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
第六章 お約束の夜
自販機の当たり
残業になったのは、面談の予定表を三回組み直したせいだった。
部門ごとの個別面談が、来週から本格的に始まる。
強硬な人ほど夕方の最終枠に――そのルールを崩さないように日程を詰めていくと、パズルみたいに、どこかがいつも合わない。
おまけに夕方まで電話が鳴りやまなかった。
気づけば、フロアに残っているのはこのみだけになっていた。
十九時前、廊下の自販機に立った帰り、エレベーターホールで藤堂常務と行き合った。
「おや、倉橋さん。まだいたの。感心だねえ」
柔らかい声と、甘い香水の匂い。
「篠宮さんと、毎晩遅くまで頑張ってるんだって?」
毎晩、という言葉に、一瞬、返事が遅れた。
「……仕事が、立て込んでいるので」
「そうかそうか。無理はしないように」
エレベーターの扉が閉まって、藤堂は降りていった。
誰から、聞いたんだろう。
考えすぎだと思いながら、首の後ろが、少しだけ冷えた。
二十時を過ぎると、フロアの照明が半分落ちる。
省エネ設定で、窓際の列から順に消えていく。
このみの席は真ん中あたりだから、手元はまだ明るい。
ただ、机の脇には、返しそびれた箱がひとつ、置いたままになっていた。