あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
十五年前の労使協議の議事録。
篠宮に頼まれて倉庫から出してきた、あの箱だ。
現物の確認は終わったから戻していい、と昼に言われていた。
でも倉庫は十七時で施錠される。
今日はもう入れない。
(明日でいいって、言われたけどな)
言われたけど、埃っぽい箱が机の脇にあるのは落ち着かない。
このみは蓋を閉め直して、紐を十字にかけた。
紐を結びながら、ふと、あの部屋の段ボールのことを思い出した。
廊下の先の、用途の分からない部屋に、置かれたままの段ボール。
検査課の主任の、名前が書かれたやつだ。
あれから中身は増えも減りもしない。
持ち主が座っているところも、あの日から一度も見ていない。
(……あの人、今、どこで仕事してるんだろう)
考えても、答えの出ないことだった。
思えば、書庫からあの箱を運んだ日から、篠宮に頼まれる資料は増える一方だった。
改定履歴。
改定前の、すべての版。
(あの版を見たら、篠宮さんは、気づくのかな)
この制度、項目がひとつ足りない――そう言われたのは、もう一か月近く前になる。
あれから篠宮とは、その話を一度もしていない。
答え合わせを、先延ばしにされている。
目頭を押さえると、今日一日ぶんの電話の声が、耳の奥でまだ小さく鳴っていた。
「まだいたんですか」