あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
声に、肩が跳ねた。
振り返ると、篠宮が給湯室のほうから歩いてくる。
手に、缶コーヒーを二本持っていた。
「議事録、明日で構わないと言いました」
「はい。でも、なんか、気になって」
篠宮はこのみの机の脇の箱を一瞥して、手にした缶の一本を差し出した。
「……え」
「下の自販機、たまたま当たって二本ぶん出たんです」
微糖の、いちばん平凡な銘柄。
受け取ろうとして、指が缶に触れる前に、篠宮の指に触れた。
温かい、と思ったのが缶なのか手なのか。
ほんの一瞬で、篠宮は手を引いて、このみも手を引いた。
「……すみません、ありがとうございます」
顔が、少し熱い。
このみは缶を両手で包んで、意味もなくラベルを見る。
カロリー表示を、三回読んだが、数字は、頭に入らなかった。
篠宮は自分の缶を開けて、少し離れた席に座る。
ネクタイが、珍しく少し緩んでいる。
缶を開ける長い指に、半分になった夜の明かりが落ちた。
偶然、二人がプルタブを引く音が、重なった。
「篠宮さんも、まだ帰らないんですか」
「見たい資料があるので」
「毎晩、いますよね」
言ってから、監視してるみたいだと思って、付け足した。
「あ、私が言えたことじゃ、ないんですけど」
篠宮は缶を持ったまま、少しだけ口の端を動かした。
この人、少し笑ったのかな?