あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
その手元には、今日も資料の束があり、全ページに、細かい折り目がついている。
説明会の日、受付席から見えた折り目と同じだ。
束の一番上のメモ用紙は、うちの会社の製品だった。
なんだか、妙にくすぐったい。
(休まないのかな、この人)
聞いたところで「効率です」と返ってくる気がして、やめた。
「倉橋さんは、いつもこの時間まで残っているんですか」
「今日は、たまたまです。……たぶん」
「たぶん」
「あ、いえ。わりと、残ってるかもしれないです」
正直に言い直したら、篠宮は「そうですか」と、少しだけ間を置いた。
責める感じは、なかった。
ただ、覚えておく、みたいな相槌だった。
缶の温もりを手のひらで感じながら、このみは、少し違うことを聞いてみた。
「あの議事録、篠宮さんは、何を探してたんですか。十五年前の」
「同じことが、もう一度起きていないか」
「同じこと」
「一度うまくいった手は、同じ人がまた使います。名前だけ変えて」
誰の、とは言わなかった。
でも、書庫で藤堂の名前を聞いたときに一瞬だけ止まった手のことを、このみは思い出した。
「それって」
「今の段階では、私の推測です。推測でものを言うと、人を傷つけるので」
言い切って、篠宮はまた缶に口をつけた。