あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
「はい、特に問題はありません」
篠宮のほうから催促してくるのは、珍しい。
このみは不思議に思って尋ねた。
「もしかして、急ぎだったでしょうか……?」
「あ、いや、そういうわけではないんです」
篠宮はそう言ってから、口を軽く手で覆い、少し迷ったように言った。
「今日は、どこかへ出かけるんですか?」
「え、あ、はい……あの、本当に急ぎだったら、資料今からでも作りますよ?」
岡本くんには悪いが、少しくらいなら遅れても問題ないだろう、とは思っていた。
「そういうわけではありません。ただ、普段と服装が違ったので、少し尋ねただけです」
篠宮はそう言ってから、このみのもとを離れた。
(……なんだったんだろう)
このみはそう思いながらも、服の変化に気づかれたのが、嬉しい。
それと、後輩とのごはんくらいで舞い上がっている自分が、少し恥ずかしい。
どっちも顔に出そうで、このみは急いで会社を出た。
そして、月曜の夜。
会社から二駅の、営業の人たちがよく使うという居酒屋。
個室ではなく、カウンター近くのテーブル席だったことに、このみは少しほっとした。
「すんません、なんか、俺のわがままで」
「いいよ。営業のみんな、不安なんでしょ」