あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
最初の三十分は、ちゃんと仕事の話だった。
説明会の予定はあるのか。
工場と本社で扱いは違うのか。
答えられることと答えられないことを、このみはひとつずつ区別して話した。
岡本くんは律儀にメモまで取っていた。
ジョッキが二杯目になった頃、メモ帳が閉じられた。
「……あの、ここからは、仕事の話じゃないんすけど」
岡本くんの声が、半音だけ低くなる。
「俺、何回も人事さん宛に打診出してたじゃないですか。あれ、毎回断られてたって話、しましたよね」
「うん。篠宮さんの名前で」
「断られただけじゃないんすよ」
岡本くんは、少し口を尖らせた。
「断りの返信のあと、毎回、篠宮さんが直接うちの部に来るんです。ご質問には私が伺います、って。俺の質問、ぜんぶあの人が回収してくんですよ。おかげで営業の不安は解消するんすけど……俺、一回も倉橋さんに繋がらなくて」
「……そうだったんだ」
知らなかった。
断りのメールのことは聞いていたけど、その先で、あの人が自分で出向いていたなんて。
(なんで、そこまで)
考えかけたところに、岡本くんの声が重なった。
「だから今日、やっと直接誘えて。……正直に言うと、半分は仕事の話が口実で」
テーブルの上で、岡本くんの手が、グラスを少し脇に押しのけた。
「俺、倉橋さんのこと、営業のときからずっと──」