あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
「ご、ごめん。あの、違……くは、ないのかもしれないけど、私、自分でもまだ」
「いいっすいいっす。全部言わせなかったの、倉橋さんの優しさってことにしとくんで」
まだ何か言おうとするこのみを、岡本くんは笑って手で制した。
それから、姿勢を直して、一度だけ小さく頭を下げた。
「二人でごはん、今日で最後にしましょ。俺が言うのも変だけど」
「……うん。ごめん。誘ってくれたのに」
「いやー、でも聞けてよかったっす。もやもやしたまま玉砕するとこだった」
岡本くんはジョッキの残りを飲み干して、いつもの顔に戻った。
「あ、営業向けの説明の場はほんとにお願いします。みんな不安なんで」
「それは約束する」
店の前で別れて、岡本くんは駅と反対のほうへ、軽く手を上げて歩いていった。
夜道を歩き出すと、手のひらに、薄く汗をかいていた。
──倉橋さん、篠宮さんのこと、好きなんすね。
他人の声で言われた言葉が、耳の奥で何度も再生される。
自分では一度も、言葉にしたことがなかったのに。
言葉にされたら、缶コーヒーも、傘も、渡り廊下も、全てが鮮明に思い出された。
(違う。違わない。……どっち?)
分からないけど、一つだけ確かなことがある。
岡本くんの言葉を聞くより先に、私は、あの人の顔を浮かべていた。
それがもう、半分の答えじゃないか、と思う。