あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
秋の夜で、廊下はもう暗い。
篠宮と会ったときは、一面オレンジ色だったな、と思い出す。
そこに、前から、足音が聞こえてくる。
速い足音。
覚えのある速さ。
篠宮だった。
ジャケットを腕にかけて、まっすぐこちらへ歩いてくる。
あの日と同じ。
ただ、あの日と違い、その目がこのみを見ている。
すれ違う位置より、二歩手前で、彼は止まった。
「今日のは、悪手です」
前置きも何もなく、淡々と告げる。
「あなたに矛先が向くと、私に名義を集約した意味が消えてしまいます。ああいう場で発言するということは、次からあなたが標的になるということなんですよ。そのことが、分かっていますか」
「分かってます」
自分でも、驚くくらい静かな声が出た。
「でも、篠宮さんだけが宛先になるのは、間違ってると思いました。実際、数字を集めているのは私です。それなのに、私だけ篠宮さんに守られて、規定ですって言い続けるのは……もう、嫌なんです」
篠宮は、黙っていた。
「私、ずっとそうやってきたんです。制度のせいにしていれば、何もしない自分を、見なくて済むから……でも、篠宮さんを見ていたら、私も私のやるべきことを、しなくちゃって思って」
篠宮の目が、わずかに動いた。
「……あなたは」