あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
全部根も葉もない噂なら、笑い飛ばせた。
どれも半分は本当なのが、やっかいだった。
「ねえ、これ、変だよ」
千夏が言った。
「噂って普通、どこか一つの部署から広まってくるじゃん。でも、これ、月曜の朝に、営業と経理と製造で、ほぼ同時に始まってるの。総務の私が把握できないルートって、そんなにないんだよ」
情報通の千夏が言うなら、確かにそうなんだろうと思う。
「てかさ、誰かがわざとやってる感じがする。……ごめん、あくまでも予想なんだけど」
千夏は、私のことを自分のことのように怒っていた。
電話を切ると、岡本くんからメッセージが入っていた。
『変な噂になってるみたいで、すみません。俺、誰にも何も言ってないです。ほんとです』
(……岡本くんは、何も悪くないのに)
謝る必要のない人が謝って、噂を流した張本人は、そんな人たちの陰に隠れてニタニタわらっているのだろうか。
午後、資料を届けに四階の奥へ行くと、例の部屋の前で、足が止まった。
ドアが、開け放たれている。
中に、人が座っていた。
検査課の主任だった。
段ボールはもう開いていて、机の上には、ノートパソコンが一台だけ。
電話機はない。
書類の山もない。
主任は、画面を見ていた。
ただ、何かをしているような気配はない。