あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
廊下を通りかかる誰もが、開いたドア越しにそれを見られる。
いや、おそらく、見えるようにわざとドアを開けさせているのだろう。
そして、いつのまにか、あの部屋には呼び名がついているようだ。
リストラ部屋。
誰かが言い出したのか、意図的に拡散させられたのかはわからない。
資料を置いて戻る途中で、主任と目が合った。
主任は立ち上がって、まっすぐこのみの前に来た。
「倉橋さん、だったな」
「……はい」
「あんたが集めた数字で、俺はあそこに座ってるのか」
静かな聞き方だった。
ただ、言葉の底に怒りがあるのがわかる。
「違います」
「何が違うんだ。人事が数字を出して、コンサルが選んで、俺があそこに座ってる。どこが違う」
(言えない。あの紙のことは──言えない)
あの部屋を作ったのが誰か、このみは知っている。
篠宮がそれを止めようとしていることも。
ただ、今は何一つ言えない。
言えば、証拠ごと潰されるはずだ。
「違う、としか、今は言えません。……ごめんなさい」
「──戸倉さんはな、あんたらを信じろって言うんだ」
主任は、このみの顔をしばらく見た。
「でも、俺は、まだ信じるかどうかは決めてない」
それだけ言って、部屋に戻っていった。