あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
第十章 体制

一身上の都合により


月曜の朝、鞄がいつもより重い気がした。
中身は変わらない。
ノートと、筆箱と、社用のスマホ……そして、内ポケットに、封筒が一枚増えただけだ。

駅からフロアに着くまでのあいだに、鞄の上から封筒の位置を三回確かめた。
紙一枚の厚みは、布越しでは分からない。
だからこそ、指が勝手に確かめにいく。

フロアに入ると、先週同様の視線を感じる。
すぐに収まると思っていた噂は、日に日に尾ひれ背びれをつけているようだ。
このみは席について、パソコンの電源を入れる。
回答待ちのメールは、週末のあいだに三十件以上増えており、とうとう百件を超えていた。

九時、篠宮との会議のために、第三会議室に向かう。
会議室に入ると篠宮は先に座っていた。
机の上に、紙が一枚だけ伏せてある。

「十五分で終わらせます」

「はい」

「議題は体制です。回答窓口の名義を、一時的に私に戻します」

伏せてあった紙が、こちらへ向けられた。
回答フローの図だった。
このみ宛になっていた矢印が、全部、篠宮の名前に付け替えられている。

(……ああ、やっぱり)

「倉橋さんには引き続き、回答案の作成を裏で──」

「承知しました」

つい、篠宮の言葉の途中で、返事をしてしまう。

「引き継ぎの一覧は、今日中に篠宮さんにお送りします。あと、回答期限の管理表と、確認待ちの案件の一覧と、対応状況も」

< 74 / 117 >

この作品をシェア

pagetop