あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
「倉橋さん──」
「ほかに、必要なものはありますか」
篠宮が、資料を閉じて、一呼吸置いて言う。
「念のためにお伝えしておきますが、名義を戻すのは、あなたを外すためではありません。噂の発生源に対処するまでの、一時的な措置です。いま矢面に立つ人間を、二人にしておく理由がない」
「はい」
「はい、ではなく」
篠宮の声に、珍しく感情が滲んでいた。
「あなたがいま何を考えているかを、教えてください」
このみは、鞄の内ポケットから封筒を出して、両手で机の上に置いた。
「私からも、ご報告があります。本日、異動願を提出しようと思っています」
篠宮の目が、封筒の上で止まる。
「……理由を、伺っても」
「一身上の都合です」
自分でも冷たいな、と思う声だった。
それを今、篠宮に向けている。
「一身上の都合、というのは、噂のためですか」
「いいえ」
「私のためですか」
机の下で閉じていた手に力が入る。
「……私が窓口にいる限り、篠宮さんの数字は疑われます。そうなると再建の内容自体が疑われます。私が、担当から消えたら変な噂は消える。ただ、それだけです」
「発生源には対処すると言いました。時間を──」
「間に合わなかった場合はどうするんですか?」