あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています

鞄から、ボロボロになった人事制度案を出す。
付箋の箇所を開くと、育成貢献のページだ。

このページの話を、湊は二度、人の口から聞いたことがある。
一度目は五年前、勉強会の席で。
当時の人事部長はこれを自分の手柄のように話し、中身の質問には一つも答えられなかった。

二度目は、二年前だ。

北関東の電機メーカー。
半年で三百人──実数は百八十七人の希望退職をやった、あの案件の後期だった。
研修担当として中途で入ってきた女性がいた。
八重樫といった。
四十前後で、教えるのが飛び抜けてうまく、新しく入った人間の定着率が、彼女の担当区だけ明らかに高かった。

定着率の要因分析の面談の終わりに、雑談として、前職を聞いた。

「数字にならない仕事ばっかりして、評価が最低で、退職勧奨です」

八重樫は、天気の話みたいに言った。

「不当評価なんかじゃないんですよ。制度通りの評価だと、私みたいな働き方はどうしても低くなっちゃうってだけで。……ああでも、ひとつだけ」

そこで少しだけ、声の調子が変わった。

「あの制度にね、育成を入れようとした後輩がいたんです。営業のときの私の後輩で、人事に行った子。役員に削られて、それでも一回は食い下がったって、あとから別の人事の子に聞きました。……会社で一回食い下がるのって、大変なんですよ、篠宮さん。あなたみたいな外の人には、分からないかもしれないけど」

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