あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
「……私は、会社の、ためを」
最後まで言えなかった台詞を、このみは初めて聞いた。
この人の言葉は、いつだって最後まで綺麗な形をしていたのに。
「──は、」
短い息が漏れた。
笑おうとして、失敗した音だった。
藤堂は、椅子にゆっくりと腰を落とした。
座った、というより、体の支えがひとつ、外れたように見えた。
篠宮の契約については、代表は一言だけだった。
「継続で。……うちは、再建をお願いしているので」
篠宮は「本件の対処は、再建計画の一部です」とだけ返した。
「人が安心して働けない会社は、数字も戻りません」
議事録に残る言葉で、報告は締められた。
藤堂は、自分で書類を揃えて、立ち上がった。
揃えた紙の角が、一度だけ、机に当たって鳴った。
手元が、さっきまでの彼のようには、滑らかでなかった。
ドアのところで、一度だけ振り返る。
挨拶は、最後まで丁寧だった。
ただ、その目は、誰とも合わなかった。
……合わせて、もらえなかった。
このみは、記録席から、その背中がドアの向こうに消えるまでを見ていた。
拍手も、快哉も、なかった。
ただ、ドアが閉まった瞬間、部屋中が同時に、長く止めていた息を吐いた気配があった。
スカッとする、と思っていた。
ずっと、この瞬間が来ればいいと思っていた。