あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
原案作成:倉橋このみ
金曜の朝、イントラに一枚のリリースが載った。
『役員の異動に関するお知らせ』
三行だった。
八百人の運命が変わった日のリリースより、ずっと短い。
読み終わる前に、フロアのあちこちで小さな声が上がった。
昼前、四階の奥で、例の部屋が片付けられた。
総務の人が机を一つずつ運び出していく。
開け放たれたままだったドアに、鍵がかけられた。
検査課の主任は、朝から元の席に戻っていた。
資料を届けた帰り、廊下で主任とすれ違った。
主任は立ち止まって、このみを見た。
「……戸倉さんの言う通りだったんだろうな、たぶん」
それだけ言って、行ってしまった。
ただ、その背中は先週より、少しだけ大きく見えた。
給湯室では、経理の二人とすれ違った。
誰かの噂をしているのかもしれないが、私のことではなさそうだ。
日常が、戻りつつある。
席に戻ると、岡本くんからメッセージが入っていた。
『なんか、変な噂、急に聞かなくなった気がするんですけど。気のせいっすかね』
『気のせいじゃないと思う』
『よかったっす。あ、営業向けの説明の場、来月もお願いします』
絵文字もスタンプもない、それだけのやりとりが、妙にありがたかった。
十時過ぎ、社用メールが一通届いた。
差出人は篠宮。
『十五分ください。議題:名義』