あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
体制、の次は、名義。
(今度は、何の名義……)
十三時、第三会議室。
篠宮は先に座っていた。
月曜と同じ席で、月曜と違うのは、机の上に置かれたものだった。
クリアファイルに入った、古い書類の束。
角が丸くなって、小口が毛羽立って、付箋が一枚、飛び出している。
「先に、これを」
篠宮はファイルごと、このみの前に置いた。
表紙に、見覚えがあった。
見覚えどころではなかった。
人事制度改定案。
五年前の日付。
(なんで、これが……)
「五年前、御社の制度設計の勉強会に、講師で呼ばれました。当時の人事部長に、改定中の案を見せられた。中身を説明できない部長の代わりに、隅々まで読みました」
付箋のページを、篠宮が開く。
育成貢献。
等級要件の表。
行動例の一覧。
同行育成の時間。
引き継ぎの質。
後輩のクレーム対応への同席。
──五年前、このみが書いた文字組みのままだった。
「最初の打ち合わせで、項目がひとつ足りないと言いました。足りないと思っていたのは、この項目です。あなたが書いて、最終決裁で削られた項目」
声が出なかった。
代わりに、視界の下のほうで、自分の指が付箋に触れていた。
何度も貼り直された跡のある、色の褪せた付箋。
褪せてはいても、色は分かる。
山吹だ。
(……うちの、付箋だ)