あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
篠宮は、二枚目の書類を出した。
こちらは、刷りたての新しい紙だった。
インクの匂いがまだ残っている。
新人事制度案。
最終稿。
評価項目の一覧に、育成貢献の行があった。
五年前と同じ場所に、戻っていた。
そして、ページの下、起案者の欄。
──原案作成:人事部 倉橋このみ。
制度設計:篠宮湊。
(私の、名前だ)
「名義の話です。この制度の原案は、あなたのものです。私の名前で出すことも考えましたが、ただ、それだと浸透に時間がかかる。……この会社で働いている人が、働いている社員たちのことを思って作った制度のほうが、きっと浸透します。そのほうが効率がいいので」
効率、の使い方が、いつもと少し違った気がした。
「あと、もうひとつ、話したいことがあります」
篠宮が書類を揃えて、脇へ置いた。
それから彼は、じっと私の目を見て言った。
「渡り廊下で、返事は要りません、今は、と言いました。……ただ、そろそろお答えいただけませんか?」
篠宮がぐっと体を寄せ、このみはつい、目線を外してしまう。
「あなたが好きです。原案を読んだときから、書いた人に会いたいとは思っていた。会った今では、それだけでは済まなくなってしまいました。再建が終われば、私はこの会社からいなくなります。それでも、あなたといたいと思っています」