あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています

まっすぐな言い方だった。
数字も、計画も、規定も、どこにもなかった。

「……返事を、もらえますか」

心臓の音が、耳のすぐ内側で鳴っている。

答えより先に、逃げ道のほうが浮かんだ。
三年間、窓口で身につけた技術だ。
都合の悪い問いには、決まった言葉を返して、自分の中身は見せない。

──私たちは、仕事の関係ですので。

──再建が終わってから、考えさせてください。

──今は、お答えできかねます。

どれも、この場をやり過ごせる言葉だった。
それに、どれも、嘘にはならない言葉だった。

……ただ、どれを取っても、私はまた、黙って消える側に戻る。

(それだけは、もうしたくない。篠宮さんと働いたのは二ヶ月半だけだけど……私もちゃんと人に向き合いたい)

逃げ道に手を伸ばさないでいることが、こんなに勇気の要ることだったなんて、知らなかった。
息を、もう一度吸う。
目の前の人は、急かさなかった。
何百の質問を五分で捌く人が、私の一言を、いつまでも待つ姿勢で座っている。

動いてもいないのに、じんわりと汗が滲む。
口がからからに渇く……でも、私は逃げない。

「……私も、好きです」

言えた、と思った瞬間に、目の縁が熱くなった。
泣くところではないのに、と思うそばから、視界が揺れた。

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