[新連載] 恋するだけでは、終われない / 恋したことなら、忘れない

第四話


 ……遅れたから、急がな・い・と。

 少し早足のまま、角を曲がると。
 ラッキーなことに目の前に。
 ふたりがちょうど……あらわれた。



海・原(う・な・は・ら)・君」
 わたしの弾む声に、彼は少し『お悩み』みたいな顔をしながら振り向いて。

「な、波野(なみの)先輩……」
 おまけにちょっと、落ち込んでいるみたい。


 逆にここ数日間。
 三年一組の教室で、いつも以上に暗かった月子(つきこ)のほうは。

「あら、姫妃(きき)
 そのひとことだけで、ご機嫌だとわかる上。

「『一緒に』放送室にいくわよ」
 なんだか妙に……愛想がいい。


「う・ん!」
 そう答えたわたしは、海原君のすぐ隣に割り込もうとしたけれど。
 それについては、月子がしっかりブロックをかけてくる。

 ……そっか、そこはちゃんと冷静な・ん・だ。

「い、いくわよ」
 わたしのニヤリとした視線に気がついた彼女は。
 海原君に声をかけると、わたしの手をひいて歩きだす。


 ……月子は彼の前だと、最近妙にかわいいときがある。


「姫妃、あなた『置いていく』わよ」
「えっ? な・ん・の話し?」

 すぐにわかると答えた月子は。
 そのあと放送室で、やけに早口で説明を終えると。

「……なので、わたしたち『放送部』で引き継ぎます」
 妙に力強く……いいきった。




「は?」
 あまりに素直な由衣(ゆい)の反応と。

「冗談ですよね?」
 疑うようすの、千雪(ちゆき)の顔。


「インフルエンザの集団感染だそうなので、しかたがないじゃない」
 本来のメンバーが『全滅』したことに。
 一ミリも同情していない感じの月子は、淡々と。

「『修学旅行実行委員会(代理)』を、拝命しました」
 もう一度同じセリフを……くりかえす。


 本来、そのお役目だけは。
 学校の『雑用係』であるわたしたちが。
 唯一、『免除』されていたはずなのに。

 担当だったはずの歴史部と古典研究会のメンバーが。
 月子によれば、互いの方向性の相違とかいう理由により

「仕事が一向に進んでいなくて、しびれを切らした佳織(かおり)先生が……」
 カラオケボックスにその子たちを軟禁したところ。
 なぜだかインフルエンザが、一気に広まったらしい。


 ちなみに先生は、おかげで体調が『よくなった』そうだけど。
 ねぇそれって、もしかして……。

「さすが、放送部の顧問よね」
 いや……ポイントはそこじゃないんじゃ・な・い?



「実行委員って、二十人くらいませんでした?」
「うそ? そうなの千雪?」
 由衣は、その仕事量を『たった三人』の二年生部員でまかなうなんて。

「無理無理! 絶対無理です!」
 必死に反対するけれど。

「『放送部』で、引き継ぐといったじゃないの」
 月子がまたそのセリフをくりかえしたので。
 わ・た・し・は……理解しちゃった。



 ……彼と『一緒にいられる』という、喜びのこもった声がする。



「もちろん、『五人』で参加します」
「ウソっ!」
 驚く由衣の隣で、千雪は少し不満そうな顔をして。

「姫妃ちゃん、本当ですか?」
 お・ぉ、そこでわたしに振るらしい。


「そういえばあなたに、まだ聞いていなかったわね」
 もう月子ったら、感じ悪・い。

「親友だから、言葉がなくてもわ・か・る・よ」
 少し迷惑そうで、でもそれよりうれしそうで。

「なら、決まりよね?」
 月子はわたしに『同意』を求めると。
 わたしはニコリと……『海原君に』ほほえんだ。


 ……いられるときは、わたしも一緒だ・か・ら。


 ちなみにわたしは、特に前作品で『いろいろ』あったあと。
 来春に映画『撮影』デビューする予定の、女優の卵なので。

 一度深呼吸してから、ここで『格の違い』を見せつけようと。

「準備はもちろん、修学旅行そのものにも『同行』し・ま・す!」

 とびきりの笑顔と張りのある美声で。
 放送部員の女子たちに……宣言してみせた。



「千雪、そういうことなので。名簿を提出してきてもらえない?」
「はーい、じゃぁ由衣。『そっち』はお願いね」
「ちょっと海原! いい加減あきらめて働きなよ!」

 な・に・そ・れ?
 みんなで無視するなんて、ひ・ど・い!


「あ、あの波野先輩……」
「な・ぁ・に、海原君?」
 ま、いっか。彼がいるから。

「保護者のかたに、承諾書のサインを……」
 ダメだ、この彼って。
 とんでもなく……『鈍い』んだった。


「海・原・君!」
「は、はい?」
「ママと仲良しだよね? だったら自分でもらいにいって!」
「ええっ? 僕がですか?」

「う・ん」
 そうしたらママも出番がきたって喜ぶし。
 まだわたしのお世話してるんだって、もっと喜ぶと思うけ・ど?


「姫妃、あなたやっぱり授業にでなさい」
「えっ?」
「わかるでしょう? 海原くんは、忙しいの」
「あ、明日提出するか・ら・っ!」

 もう、月子はすぐに邪魔をする。

 でも、でもなんだか。
 このメンバーで『修学旅行』にいくなんて。
 とっても……楽しみだね・っ!




 そんなことがあって、それから数日間。
 わたしたちは文字どおり一丸となって準備をして。
 なんとか……出発するめどをつけられた。


「響子先生、いってき・ま・す!」
 月子とわたしの担任で、副顧問の高尾(たかお)響子(きょうこ)先生は。
 今回はお留守番なのが寂し・い・な。

「だってわたし、『三年生』の担任なのよ?」
 そういえばわたしたちも三年生なんだ・け・ど。
 きっとそのあたりは……気にならないのだろう。


 お土産じゃなくて、土産話しを待っているからと。
 先生はキュートな顔で、わたしたちに告げたあと。

「姫妃、ちょっときて」
 なぜだかわたしだけを手招きすると。


「ちゃんと『あの子』とも、仲良くしてね?」



 最後になんだか……意味深なセリフを、耳打ちした。









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