キスから始まる恋は甘くて苦い
「で、どこが不安?」
「二次関数の平方完成が、ちょっと」
「ああ……」

 隣り合って座り、ほたるは自分のノートを開いた。

「どの程度理解できてるか知りたいから、ちょっと解いてみて」

 蒼一はノートにいくつか例題を書きこんだ。

「はい」

 ほたるは意気込んでシャーペンを動かし始めた。Xの係数が奇数のもの、マイナスのもの、分数のもの……。

「できました」

 結果はそこそこ。マイナスと分数が組み合わさると混乱して計算ミスをするようだ。

「初歩的なミスで恥ずかしいです」

 蒼一が模範解答を書きだすと、ほたるはバツが悪そうに彼を見上げた。

「考えすぎなんじゃねえの?」

 苦手意識を持っているとよくあることだ。でも、それは案外思い込みのことが多い。

「シンプルに考えてみろよ」

 さらに問題を書いて、ノートを差し出す。

「参考書とか問題集取ってくるから、それ解いてて」
「はい」

 蒼一はほたるを残して2階の自室へ上がり、洋服に着替えて本を何冊か抱えリビングへ戻ってきた。

「おまたせ」
「おかえりなさ……い」

 10分ほどで戻ってきた蒼一を振り返ったほたるが、動きを止める。細身のジーンズに、蒼一の端正な顔立ちを際立たせる黒い半袖のTシャツ。
< 102 / 199 >

この作品をシェア

pagetop