キスから始まる恋は甘くて苦い
 その考えはきっと数学以外でも同じはず。
 自分の気持ちも、整理したら答えが出せるかもしれないと思考を巡らせる。

 私はどうして、先輩と一緒にいるんだろう?

 蒼一とは時間があれば会っている。特に、初めてキスしたときから……離れがたくなって。
 そばにいると心が満たされるような気分になる。

 でも……会いに来てくれることに甘えて、自分から動いたことってあったかな?

 湿った風を感じて大きな窓の方へ目を向けると、レースのカーテンがふわりと舞い上がった。
 この、風のように。

『会いに行こう』と思う間もなく、先輩は来てくれる。

 だから、そばにいることがあたりまえだと思っちゃ……いけないんだ。

 反対側を見ると蒼一はソファに寄り掛かって目を閉じていた。

 可愛い寝顔だな。

 年上で、かっこよくて、優しくて。
 普段は全然隙がないのに。今は、こんな頼りない後輩の前で無防備に眠っている。

 どうして?
 
 私、なんだろう。
 
 ずっと疑問には思っていた。もっと彼にふさわしい人はたくさんいる。

 それでも自分を選んでくれるのは……

 なんて、うぬぼれてるよね?

 そう思ったとたん、滴がポタポタとこぼれてノートに雨を降らせた。

 なんで涙が出てくるの?
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