キスから始まる恋は甘くて苦い
『泣けるくらい好きになったから』

 ふいに、姉の声が耳によみがえった。どうして雅也と付き合うことにしたのかを訊いたときに返ってきた言葉だ。
 答えが、すっと降りてきたような気がした。

 そっか、私……選んでもらえて嬉しいんだ。

 ハッとして、持っていたシャーペンが右手から滑り落ちる。

 心は正直にサインを出してたんだ。

 やすらげたり、ドキドキしたり。
 恥ずかしくなったり、やきもち妬いたり。
 嬉しくなったり、寂しくなったり……
 相反する感情が同居するのは、これが“恋”だからなんだ。
 認めた瞬間、世界が一変したような気がした。

 私は先輩のことが好きなんだ。

 顔を上げると、蒼一は静かな寝息を立てていた。

 あなたが好き……

 まぶしい笑顔も、頭を撫でてくれる大きな手も、受け止めてくれるたくましい腕も。
 優しさをくれる、形のいい唇も。

 キス、したい。

 あなたがどんな気持ちでするのかはわからない……けど。
 
 私は、好きだからしたい。

 ほたるは蒼一に近づき、唇をそっと合わせた。

 初めて、自分から……

 やわらかい感触にドキドキして体温が上昇する。
 数秒後に離れて目を開けると、蒼一と目が合った。

 うそ、起きてた?

 「あっ……えっと……」 

 あまりの恥ずかしさに、ほたるは顔を真っ赤に染めて座ったまま後ずさった。


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