キスから始まる恋は甘くて苦い
「そこで待ってろ」

 蒼一は濡れた靴下を脱いでリビングを突っ切った。
 バスタオルを持って戻ってくると、ほたるは素足で窓辺に突っ立っていて目のやり場に困った。

「濡れたもんはこれに入れて」
「ありがとうございます」

 ぶっきらぼうにビニール製の袋を差し出されたほたるは、それを受け取って靴下を入れた。

「ったく、後先考えろよ……」

 自分のことは棚に上げつぶやく。
 バスタオルで髪を拭いてやるとほたるのくりくりした目がタオルの隙間から見え隠れした。

「先に着替えてください」

 自分のことを後回しにする蒼一に訴えても聞き入れてはくれずに沈黙が訪れる。

 いくら自分に落胆したって、離れようとしたって。

 目の前にいたら、どうしたって世話を焼きたくなる。

 さすがに風呂を使えとは言えず、タオルを渡してよく拭くように言い聞かせる。
 床を拭いた後、蒼一は寝室へ向かって母親の服を適当に選びリビングへ戻った。

「好みかどうかはわかんねえけど。これに着替えろよ」

 それだけ言ってほたるをリビングに残し、自室で着替えを済ませて階段の途中に座り込む。
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