キスから始まる恋は甘くて苦い
「蒼のクラスの子だけど、犯人捜しなんかしちゃダメよ。蒼が出て行ったら、逆恨みされるのは永瀬さんなんだから」
「なんでおまえがほたるの心配してんだよ……」

 正直半信半疑だったけれど、瞳が嘘をついているようには見えなくて戸惑ってしまう。蒼一は彼女をじっと見下ろした。

「なによ、あたしだって心配くらいするわよ」

 腕組みをして目を逸らした瞳はすぐに視線を戻した。

「あの子に何かあったら蒼が悲しむでしょ。蒼には幸せになってほしいって、これでも思ってあげてるんだからね」

「真野……」

 言い方は相変わらずだけれど、表情にかげりはない。

 ってか、幸せになってほしいって?

 そんなセリフを瞳から聞けるとは思いもしなかった。
 成り行きで付き合い始めて、気まずい別れ方をして……打ち解けあえることはもうないと思っていた。立ち直る前に去ってしまったことを本当は申し訳なく思っていた。

 なのに、そんなことを思ってくれるのか……

 自分のしたことが正解だとは思わないけれど、間違ってもいなかったのかもしれない。
 
「それに、あの子のことも嫌いじゃないし」
「……へえ」

 ぼそりと呟く瞳を見やり蒼一は口角を上げた。

「今日は雨が降るんじゃねえの?」
「降らないわよ」
「違った、雪か」
「は? バカなこと言ってないで早く連絡しなさいよ」

 これ以上からかうと叩かれてしまいそうだ。蒼一が真面目な顔でうなずくと、瞳は「頼んだわよ」と言い残して剣道場を後にした。
 更衣室へ戻り、電話をしようか迷った末にメールを選んだ。声を聞いたらいても立ってもいられなくなりそうだったから。
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