キスから始まる恋は甘くて苦い
「真野と何話してたの?」

 蒼一は戻ってきたほたるに問い掛けた。いつのまにか打ち解けた雰囲気になっていることを不思議に思ったのだ。

「ふふっ、秘密です」

 上機嫌なほたるにそれ以上を訊くのは諦めた。それよりも、これから向かう先のことを考えるとテンションが上がるような下がるようなおかしな気分になってくる。

「なあ、マジですんの? 俺の紹介」

 バス停前で立ち止まった蒼一がほたるを振り返った。

「はい。雅也さんもいるし、大丈夫ですよ」
「いや、むしろハードル上がってるよな?」

 ほたるが「蒼一さんを紹介したい」と言い出し、まひるのお見舞いに一緒に行くことになり今に至る。

 麻生の前で紹介されるって、どんな状況だよ?

 想像するとかなり恥ずかしい。しかし、いずれすることになるのなら早いに越したことはない。ずっと気になってはいたから、いい機会であることも認める。

「お姉ちゃん、喜んでくれるかな……」

 それに、実はほたるの方が不安げだった。
 自分ばかり幸せなことに罪悪感がある――と、そんなことを口にしていたことを思い出す。

「普通に考えてさ、妹の悲しむ顔より笑顔を見たいと思うんだよ」

 さりげなく肩を抱き寄せられ、ほたるは蒼一を見上げた。

「まひるさんが“帰りたい”って思うくらい、笑ってればいいんじゃねえか?」

 その言葉は彼女に衝撃を与えた。そんな考え方、まるで思いつかなかった。

「はい。本当にその通りですね」

 瞬きをしたほたるの両目から涙がこぼれ落ちた。
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