キスから始まる恋は甘くて苦い
 病室をノックしてドアを開ける。雅也は、まひるの指先をマッサージしていた手を止めた。

「やあ」
「どうも」

 簡潔な挨拶を交わすと蒼一は勧められたパイプ椅子に腰掛けた。隣にほたるが座り、雅也と向い合わせになる。

「ふたりとも、おめでとう」

 ほたるの交際宣言と短くなった髪に驚いたけれど、同時に安堵もした。ふたりが来る前、一足先にまひるの耳元で報告をしたのは、内緒の話だ。

「ああ、どうも」

 雅也と目が合い蒼一はどう反応していいか困って頭を掻いた。

「お姉ちゃんの手、握ってみてください」

 その様子を見ていたほたるは、おもむろに姉の左手を持ち上げて蒼一に促した。

「いいの?」

 さわったら壊れてしまいそうなくらい白く細い手に躊躇しつつ、おずおずとその手にふれる。

 あったかいな……

 雅也が懸命にマッサージしていた成果なのだろうか?
 たとえ目が覚めなくても、しっかり生きていることを感じられる。
 ふいに、喜びとも悲しみともつかない複雑な感情が込み上げた。
 
 ほたるや麻生がそばにいることは、きっと感じてるはずなんだよな。

「はじめまして」

 あれだけ気恥ずかしいと思っていたのに自然と言葉が出ていた。

「辰巳蒼一です」
「私の好きな人だよ」

 ほたるが手を重ねてきて、ふたりでまひるの左手を包み込む。
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