選ばなかった人生

 「……そうか」

 私は毛布を握りしめた。
 お金があれば家は買える。
 食べ物も買える。
 暖かい服も買える。
 でも、自分の名前を呼んでくれる人までは買えない。
 その事実に気付いた時、何とも言えない気持ちが込み上げた。

 その夜、私は眠れなかった。
 子供たちのことを考えていた。
 一度も存在しなかったはずの二人。
 それなのに、私はその二人を失ったような気持ちになっていた。


 翌朝、避難所の外へ出た。
 そこで二人の子供が視界に入る。
 キョロキョロと何か困ってそうな女の子と男の子。
 年齢も背格好もどこか見覚えがある。
 私は立ち止まった。
 胸が大きく鳴った。
 そんなはずはない。
 そんなことあるわけがない。
 それでも足が勝手に動いた。

 「……大丈夫?」

 二人が振り返る。
 女の子が私を見る。

 「はい」

 その顔を見た瞬間私は分かった。
 娘と息子だった。


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