選ばなかった人生

 私がかつて抱きしめた二人。
 私がかつて「手放したい」と思った二人。

 「あなたたち……」

 ……存在していたの?
 声が震える。
 すると女の子が首をかしげた。

 「誰?」
 
 その一言で、胸の奥が崩れ落ちた。
 
 「……」
 
 そこへ一人の女性が走ってきた。
 
 「大丈夫?怖かったね」
 
 女の子がその女性の手を握った。

 「ママ」

 私は息を止めた。
 続いて男性もやってきた。

 「二人とも、こっちにおいで」
 「パパ!」

 二人は父親のところへ走っていった。
 私は何も言えなかった。
 目の前にいる二人は確かに私の子供だった。

 でも私のことを知らない。
 私を母親だと思っていない。
 二人には新しい母親と父親がいる。
 そしてその家族の中で幸せに生きている。
 女の子が振り返った。私と目が合う。時が止まった気がした。
 
 不安そうな瞳に見つめられて私は笑った。

 「……元気でね」

 女の子は不思議そうな顔をした。

 「おばさん、誰?」

 私は首を振った。

 「ううん。なんでもないよ」

 二人は両親の手を握って歩いていった。
 今度は振り返らなかった。


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