選ばなかった人生

 急に寂しさに襲われた。
 そして、突然思った。

 ――あの子たちは今頃どうしているだろう。
 もちろん存在しない。
 そんなことは分かっている。
 それなのに娘の笑顔が浮かんだ。
 息子の寝顔も。
 「お母さん」と呼ぶ声まではっきり聞こえた気がした。
 私は目を閉じた。

 「……会いたい」

 その言葉が自分の口から出たことに驚いた。


 それからさらに年月が流れた。
 ある日、大きな地震が起きた。
 家は倒壊を免れたものの、電気も水道も止まってしまい、一人暮らしの私は避難所へ向かった。
 体育館には大勢の人がいた。
 泣いている子供や、子供を抱きしめる母親。
 毛布を運ぶ父親。

 「寒くない?」
 「大丈夫?」
 「お腹空いてない?」

 あちこちから家族の声が聞こえる。
 私はその光景をぼんやり見ていた。
 そして気づいた。
 私は一人だった。
 お金はある。
 家もある。
 何でも買える。
 けれど今、私のことを心配している人はいない。

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