恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで


同時に、空いている右隣に誰かが座る気配がした。


「先生!?」


振り向くと、仏頂面のユリウスが座っており、驚いたイザベラは思わず持っていた箱を落としそうになった。

なぜこんなところにユリウスがいるのだろうと疑問に思ったが、いつもの徘徊癖で外へ出て、力尽きたところにちょうどいいベンチがあった。座ってみたら、偶然イザベラたちがいた。

きっと、そんなところだろう。

特に何も言葉を発してこないが、ユリウスがイザベラの持っている箱をじっと見ている。

その視線に気付いたイザベラは箱から無造作に一枚選び取って、ユリウスに差し出す。


「どうぞ」


すると、ユリウスはなんの躊躇いもなく、イザベラの手から直接クッキーを口に含んだ。

吐き出すことなく口を動かしているということは、それなりに食べられるとユリウスが判断したことにイザベラは胸を撫で下ろす。


「美味しいですよね、ジョシュア君が作ったんですよ。そのクッキー」


そこで初めてイザベラの左隣に座っているジョシュアに視線を向けたユリウスだったが、すぐに逸らす。


「...お前には、少し物足りないのではないか」


ぽつりと呟くように発せられた言葉にイザベラは少し驚いた。


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