恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで
しかし、ジョシュアのとんでもない発言を耳にして、イザベラの動きが一瞬止まってしまった。
確かにユリウスから名前を呼ばれたことはない。
そもそも他人に関心がないユリウスが人の名前を覚えているはずないのだ。
こんなユリウスに不利な質問をされたら、激怒するに違いないと慌ててユリウスを見上げると、案の定顔を顰めさせている。
そうなる前に、力ずくでも抑え込もうと立ち上がろうとした瞬間、ユリウスの口から信じられない言葉が出て来た。
「ーーイザベラ」
聞き慣れたはずの自分の名前なのに、ユリウスの声で呼ばれると、少しだけ耳がこそばゆい。
だが、そんなことよりもイザベラはユリウスが自分の名前を覚えていたことにひどく感激してしまっていた。
「先生、すごいです!!わたしの、名前覚えていてくれてたんですね!!」
代わりにイザベラはユリウスをこれでもかと褒めちぎることにした。
「本当に、本当にすごいです!!ここ最近で、一番感動しています!!やればできる人だったんですね!!」
目を輝かせて、やたらと自分を称賛するイザベラにユリウスは気に食わないのか、苦虫を噛み潰したような顔を向けてくる。
「...お前は、わたしをなんだと思っているんだ」
「...魔術以外に興味がない天才、ですかね?」
常日頃からユリウスに対して抱いていた印象を正直に伝えると、納得いかなかったのか不服そうに眉をひそめる。
「だって、わたしが先生の下で働き始めてから、今まで名前で呼ばれたことなんて、なかったんですよ。とっくの昔に忘れ去られた、もしくは覚える気すらなかったって思っちゃうのも無理はないかと...」
「なら、お前はどうなんだ?」
紫水晶の瞳がイザベラを見据える。