恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで
「それじゃあ、ジョシュア君。クッキー、ありがとうね。美味しくいただきます」
「いえ、それは嬉しいのですが...大丈夫ですか?」
イザベラは、赤くなった頬を涙目で撫でていた。
名前を忘れられたことに腹を立てたユリウスに、容赦なくつねられたのである。
そんな彼女に、ジョシュアは気遣うような眼差しを向けてくれた。
あの後、ジョシュアが止めに入ってくれなければ、間違いなくイザベラの頬は千切れてしまっていただろう。
痛みのおかげでイザベラはユリウスの名前を思い出したのだが、ユリウスは未だに機嫌が悪く、いつにも増して不貞腐れた様子でベンチに座っていた。
この後、騎士見習いとしての定例訓練があるジョシュアが業務に戻るので、お見送りしている。
「それでは、イザベラさん。また今度」
笑顔でイザベラに挨拶をすると、なんとジョシュアはユリウスに向き合った。
そして、ジョシュアには似合わない不敵な笑みを浮かべる。
「僕、負けるつもりはありませんから」
そう宣言すると、ジョシュアはユリウスに一礼をし、その場から去っていく。