先輩、好きになってください
部活終わり。

体育館には、ボールを片付ける音やモップをかける音が響いていた。

「圭、そっちお願いー!」

「はーい」

圭がボールを片付けていると、隣から綾花がやってくる。

「圭、これ持ってくね」

「あ、ありがとうございます」

「いいよー」

二人で黙々と片付けをする。

しばらくして。

「……ねえ、圭」

「ん?」

「ちょっと聞きたいことあるんだけど」

「なんですか?」

綾花が少し迷う。

「……日向くんって」

「はい」

「本当に私のこと好きなのかな?」

「……」

圭の手が止まった。

「……先輩」

「ん?」

「今さらですか?」

「え?」

思わず笑ってしまう。

「いや、だって……」

「うん」

「日向、めちゃくちゃ分かりやすいですよ」

「そうなの?」

「はい」

圭はボールを片付けながら続ける。

「俺、あいつとずっと一緒にいるんですけど」

「うん」

「こんなに誰かのこと話す日向、初めて見ました」

「……」

「体育祭のときだって、先輩のことばっか見てたし」

「え……?」

綾花の動きが止まる。

「あと、最近ずっとスマホ見てるんですよ」

「スマホ?」

「先輩からLINE来てないかなって」

「……」

「本人は隠してるつもりみたいですけど、全然隠せてないです笑」

綾花は少し俯く。

「……そんなに?」

「はい」

圭は笑って頷く。

「俺が知ってる中で、あんな日向見たことないです」

「……」

「だから」

圭が綾花を見る。

「先輩が思ってるより、ずっと本気だと思いますよ」

綾花は何も言わなかった。

ただ、胸の奥が少しだけ熱くなる。

「……そっか」

「はい」

「日向くん、そんなに……」

「まあ、あいつ頑張ってるんで」

圭が少し笑う。

「ちょっとくらい、相手してあげてくださいよ」

「ふふっ」

綾花も笑った。

「うん」

その返事をした瞬間。

自分でも、少し驚いた。

前ならきっと、

「可愛い後輩だからね」

そう答えていたはずなのに。

今は。

――もっと日向くんのこと、知りたい。

そんな気持ちが、少しだけ生まれていた。
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