先輩、好きになってください
数日後の放課後。

綾花が昇降口へ向かっていると、

「綾花」

「湊くん」

神谷湊が立っていた。

「ちょっといい?」

「うん」

二人で少し離れた場所へ移動する。

「……松宮くんと付き合ったんだって?」

「……うん」

綾花が少し照れながら笑う。

「そっか」

湊も笑う。

「なんとなく、そんな気はしてた」

「ごめんね」

「なんで綾花が謝るの?」

「だって……」

「謝らなくていいよ」

湊は優しく笑った。

「俺が勝手に好きだっただけだから」

「……湊くん」

「ただ」

湊の表情が少しだけ真剣になる。

「松宮くんには言っときたい」

「何を?」

「綾花のこと、泣かせたら許さないって」

「……ふふっ」

「笑うところじゃないから」

「ごめん笑」

そのとき。

「……神谷先輩」

後ろから日向の声がした。

二人が振り返る。

「日向くん」

「こんにちは」

「……今の聞いてた?」

「はい」

日向は湊を見る。

「綾花先輩……じゃなくて」

少し照れながら。

「綾花ちゃんのこと、絶対泣かせません」

湊が少し笑う。

「言うようになったね、松宮くん」

「本気なんで」

「……そっか」

湊が日向の肩を軽く叩く。

「じゃあ、頼んだよ」

「はい」

二人は短く頷き合う。

もう、敵じゃない。

でも。

きっと、お互いに忘れない。

同じ人を好きだったことを。
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