通りすがりの俺様
 

「美味しそうなおじさんだったんで、レシートもらうとき、ご馳走様でしたって言っちゃったんですよね~」

 次の日。
 ロビーを歩いているいずるがそんなことを言っているのが一鷹の耳に聞こえてきた。

「美味しそうなおじさんってなによ」
と有沙や晴菜たちが笑っている。

 外回りに出ようとしていたのだが、思わず足を止めて聞いてしまう。

 いずるの声をもっと聞いていたい思った。

 話している内容がしょうもなくても――。

「レシートもらうとき、ご馳走様のなにが変なの?」
と途中から話に混ざってきたいずるの同期の佐保子(さほこ)が訊いている。

「文房具屋さんだったから」

「なにが美味しそうだったの?」

「おじさん。
 美味しそうなイタリアン作りそうなお腹の出たおじさんだったの」

 やはりしょうもない話をしていたな、と思うのに。

 いずるの言うおじさんがリアルにイメージできてしまう自分が悲しい。

 いずるに毒されてきたのだろうか。
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