通りすがりの俺様
いずるが社内で配り物をしていると、一鷹が走らない程度に急いで追いかけてきた。
「鳴沢」
はい、と振り向くと、
「明日、シークレット花火が上がるらしいんだが、観に行かないか」
と一鷹が言う。
「……シークレットになってないじゃないですか」
ほんとなんですか? と言うと、
「矢端が教えてくれたんだ」
と言う。
「二重の意味で怪しいですね」
いや、今のところ、矢端さんによる害はないんですけど。
なんかこう、言動が意味深なだけで――。
「明日、八時ごろ、山頂のこの辺りに行くとよく見えるらしい」
と矢端に描いてもらったらしい地図を見せてくる。
「……大丈夫ですか。
突き落とされませんか?」
「大丈夫だろう。
あ、そういえば、昨日もお前に誤魔化されて、つづらの中身を聞きそびれたな」
いえ。
あなた方が勝手に脱線して行ったんですよ……。
「まあ、あれ、水内さんにとってはたいした物じゃないかもしれません。
あれは――」
「おい、水内」
「はい。
じゃあ、またな」
廊下の向こうから部長に呼ばれ、一鷹は行ってしまった。
……また言えなかった。