通りすがりの俺様
 


 朝、総務の前の廊下まで、一鷹は昨日貸したコートを持ってきてくれていた。

「ありがとう。
 昨日は、このコートのおかげで助かったよ」
とくしゃみをしながら、一鷹は言う。

「風邪をひいている以上、助かったかどうかは謎ですね……」

 あ、矢端さん、といずるはちょうど来た矢端に花火のお礼を言う。

「僕も違う場所から見たんだよ。
 綺麗だったね。

 思ったより、数上がってたし」

「……ただの親切だったのか、矢端」

「親切以外、なにがあるの?」

 それはそうなんですが……。

「きっと綺麗だし、いい雰囲気になるだろうから行ったらいいよと思って言っただけだけど?」

 『行ったら、きっと……』のつづきはそれかっ、と思いながら、いずるは言う。

「なんかこう、意味深なんですよ、矢端さんは言い方とか、言うことが」

「えっ?
 君らが考えすぎなだけじゃない?」
と言われ、まあ、そうかもな、と思いながら、ロッカーに行った。


 


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