通りすがりの俺様
なんで家の電話番号なんだろうと思ったら、
「僕も秀の携帯の番号は知らないんだよね」
と矢端は言っていた。
なんで矢端さんにも教えないんだろうな。
そう思いながら会議室の準備が終わったあと、渡り廊下を歩いていて、佐保子と出会った。
佐保子は、さっと身構える。
「なに?」
と問うと、
「いや、水内さん使って、秀さんの番号知ろうとしてるんでしょ?」
と言う。
「大丈夫。
もう聞いた」
と言うと、佐保子は愕然とした顔をした。
「なんてことっ。
私の取引の材料がっ」
……なんの取引だ、と苦笑いしていると、
「矢端さんに訊いたの?」
と窺うようにこちらを見て訊いてくる。
うん、と言うと、ちょっと迷ってから、佐保子は言った。
「その番号教えて」
いや、なんでだ……。
「だって、携帯の番号は知らないんだもんっ」
「私も知らないよ。
矢端さんも、秀さんの電話番号は家のしか知らないんだって」
何故かそこで、佐保子の目が輝く。
「ミステリアスッ!」
「え?」