通りすがりの俺様
家に帰ると、兄が来ていた。
いやまあ、兄の家でもあるのだが。
「ほうら、二人とも、ケーキ買ってきたぞ。
さあ、これを食べながら、お前のつづらについて語り合おうじゃないか」
……いらないんじゃなかったんですか、私のつづら。
「どれでも好きなのを選べ」
兄は車をとめるのが大変なので、なかなか行かないが美味しい洋菓子店のケーキを買ってきていた。
白い箱をテーブルの上で広げてみせる。
一鷹と二人、覗き込んだ。
「あ、私、チョコがいいな」
「俺はショートケーキ」
「あっ、でも、ショートケーキの上の苺、美味しそうですね」
「……しょうがない。
上の苺はやるよ」
「それじゃあ、ショートケーキである意味がないですよ」
「いやいや、俺はいい。
お前が食べろ」
いえいえ、水内さんが、と揉めている二人を見ながら、呆れたように兄が言った。
「……いずる。
冷蔵庫に苺が一パックあるようだが」
「いや、ショートケーキの上の苺とそれは別物です」
「そうです」
と一鷹も頷く。
「……そこに載せろよ、あの苺」
「そうじゃないのよ、お兄ちゃん」
「そうです。
そうじゃないんです」
「息が合ってるな、お前ら……」