通りすがりの俺様
「自分のところでトイレットペーパーが切れそうとか、そんな衝撃的なこと忘れるわけないだろうが」

 そんなに衝撃的ですか?

「外のトイレで替えがなかったら、大変じゃないか」

 あれはうちのトイレで、替えはありましたよ。

「それにしても、その狭い土地が何億で買い取られるのか知らないが。
 欲しがってるやつは何人だ。

 幾らかなら金配ってやってもいいぞ。
 そいつらが静かになるのなら」
と一鷹が言い出す。

 お金持ちの解決法、怖いな……。

「さすがに億はやれないが、そもそも棚ぼたな金。
 多めに渡せば黙って、お前には付き纏わなくなるかもしれないだろ」

 ハイハイッと兄が何故か手を上げた。

「じゃあ、いずるに付き纏わなくなるから、くれ」

 あなたは兄ですよ。

 ……兄、怖いな。

 普段食べない感じの、おつまみになる缶詰などをコンビニで矢端が買っていて、物珍しく眺めている間、一鷹が何処かに電話していた。

「いずる」
「はい」

「俺の家は嫌だと言うから、家を借りてやったぞ」
「えっ?」

 しばらくそっちに住めと言われる。

「大丈夫だ。
 うちの親が所有してる家だから」

「……なんて言って借りたんです?」

「好きな女を住まわせたいから」

「それ、見に来ない? 親」
と新しい缶詰を開けながら、矢端が言う。
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